裁判~保釈 ③

2度逮捕されながらも、当初は「ダルクに通いだしたのは裁判のため」と考えていた仲間の話です。
大阪ダルクに通うにつれて自分の中で変化していくものと、薬物を使用せずに時間を過ごせる自分をインタヴュー形式で話してくれました。

裁判のために印象を良くするためのダルク通所がきっかけに

裁判~保釈 ③ | 仲間の話 - 大阪ダルク

Aと言います。よろしくお願いします。

――ダルクにつながったきっかけからお話しいただけますか。

ダルクを知ったのは弁護士からです。ぼくは、覚醒剤で二回逮捕されました。一回捕まって、やめようと思っていましたが、やめれられずに、二回目の逮捕になりました。そのとき、弁護士から覚醒剤をやめるための施設があるときいて、大阪ダルクを教えてもらいました。それがダルクにつながったきっかけです。
つながったのは、去年の十一月中ごろ。ダルクに来て話をしましたが、ぼくは仕事をしているので、ダルクに入所はできないと思って、NAを教えてもらってNAに通うようになりました。NAに通ううちに、ダルクも通所ができるときいて、十二月のはじめから午前中だけ通所という形でダルクに通いだしました。ダルクというと、ぼくには入寮しなければならないというイメージがあったのですが、逮捕されていたことで仕事ができていなかったので、仕事を優先しなければならないということがあり、相談をきいてもらって通所ということになりました。

――ダルクに通うようになって、どのように感じましたか。

最初は通って意味があるのかなと思っていました。ぼくは裁判をひかえていたので、最初は裁判のために印象を良くする、裁判のいい結果をとるために仕方なく通っている感じでした。ミーティングでわけのわからない話をきかされると思っていたし、喋るのも嫌で、トイレやたばこで時間をつぶしていました。
それが、通っているうちに、少しずつ変化がでてきました。通っているうちに、平安な状態が続くようになりました。ぼくはよくイライラしていたのですが、それが減っていって、何が影響したのかはわからないですが、ミーティングに通っていたら平安に落ち着いていられました。覚醒剤を使いたいとも思わない。

覚醒剤をしている人は失くしていくものがすごく多い

覚醒剤をやめるためには、自分の生き方を変えていかなければいけないと思うようになりました。仲間からミーティングで教えてもらったり、プログラムとかステップとかに取り組むこと。そうすることで生き方を変えられると思うようになりました。
昔は人を責めてばかりいました。自分が正しいと思っていて、相手のことを考えませんでした。最近は人を責めるよりも、何が原因かを考えるようになりました。例えば、相手の態度が悪かったりしたときとかも、前はただ怒っていましたけど、今は変わりました。

覚醒剤を去年の十月末ころまで使っていたので、今で四か月くらいしか経っていないので(インタビューは平成三十年三月)、そんなにすぐに変われるものじゃないと思っていますが、今はミーティングに参加していくことが自分の回復には必要だと思うようになっています。気づきというか、仲間はこういうふうに乗り越えていっているというのを気づかせてもらえるし、クリーンが長い人、先行く仲間のメッセージをきくと、ぼくも同じようにクリーンな状態を続けられると思っています。


――考え方に変化があったのはいつごろでしょうか。

通いだして、三か月めくらいからでしょうか。それまでは、いらいらしたり、もちろん裁判のこともあったので、落ち着かない時期もありました。落ち着いている日があっても次の日には落ち着いていない。それが、三か月めくらいから変化を感じはじめました。

ぼくの場合、ダルクに通いだしたのは裁判のためですし、NAもそう。それが途中から、自分のために必要だなと感じるようになったので通っています。今は仕事が忙しい時期で、体もえらい。裁判の結果はいい結果が出たのですが、ここで通わなくなったら良くないと思っています。仕事でも、今までは人に押し付けていたこともありましたが、自分でできることはするようになり、会社で怒ったりすることが減ったと思います。

ダルクに通っていることで、悪い方向に行くことはないと思っています。あとは自分自身で明確な意思をもって変えていくことが一番大事だと思っています。


――弁護士さんからきくまで、ダルクのことはきいたことがありませんでしたか。

きいたことはありましたが、自分が関わることもないだろうと思っていました。これまで覚醒剤を使っていましたが、中毒者という意識はまったくありませんでした。今はミーティングに行って、病院にも通っていますが、それまでは依存症ということを考えてもなかったです。依存症ということで病院に通ったこともありませんでした。

病院に行ったのも裁判のためで、それも最初は十一月の中ごろだったと思います。今も一週間に一回通っています。それまで依存症ということは考えもしなかったのに、なぜ認めざるをえなくなったかというと、それは仲間のメッセージ。みんなが依存症を認めて受け入れているので、それが自分もたどっていく道だなと思うようになりました。

ぼくがはじめて覚醒剤を使ったのは十九歳のときです。薬物を田舎で使っていて、ずっと田舎におったらあかんと思って大阪に出てきたのですが、大阪ではずっとやめていて、三十五歳か三十六歳のころ、何かの拍子で再開し、それから一、二年くらい使っていて、一回目の逮捕に至りました。逮捕されて、執行猶予になって、そのときは、もうやめようと思いました。C型肝炎にかかっていることも発覚して、ほんまにやめようと思って、しばらくはやめていたのですが、ちょこちょこ、月に一回とか使いだして、また薬物を使うようになりました。去年の十月末に二回目の逮捕なのですが、捕まる前は三か月くらい、仕事もしないでずっと使っていました。最初は使っていることを人に知られたくないので、警戒してこっそり使っていたのが、そのうち、車やネットカフェなど人目も気にせずに使うようになって、いつかは捕まるのじゃないかな、とは思っていました。結局、捕まって、それから現在に至っています。

薬物のことについてはずっと隠しておきたくて、警察でも嘘ついていましたが、ダルクに通うようになって正直に話すことができるようになりました。
ぼくは二回逮捕されたのですが、仲間の話をきくと、覚醒剤をしている人は、なくしていくものがすごく多いと感じます。仕事であったり、家族、友達、信用、信頼。ぼくは首の皮一枚残ったところだったと思います。

今回、裁判の結果で、もう一度執行猶予になったのですが、これが最後のチャンスだと思って、これから生きていく以上、一生再発しないように。今度使うとすべてを失うと思うので、長い日々になるのですが、今日一日をつづけて、回復につとめたいと思います。


――今の生活について教えていただけますか。

今は、規則正しい生活をしています。午前中にダルクに来てミーティングに参加し、午後に仕事をして、夜はNAのミーティングに参加しています。自分の中でスケジュールを立てているので、午前中はダルク、午後は仕事。仕事は営業がメインなのですが、そのスケジュールをこなしている生活です。ほかの誘惑があるようなところに行ったりとかはないです。
家族のことでいうと、ぼくには子どもがいるのですが、子どもとの時間も今まではほぼとってなかったかなと思います。今はいっしょに食事をしたり、相談をしあったりしています。今回のことで、子どもにもぼくの薬物のことがわかってしまったのですが、子どもが気にかけてくれていて、関係性は前よりも良くなっているように感じます。

会社でも、子どもに対しても、怒ったりとか、注意したりのときは、頭ごなしではなく、さとすような言い方ができるようになってきたかなと思っています。まだ些細なことですけど、今までの怒っていた心の持ちようが変わったと感じています。
心の穏やかさに気がつきました。前はひとつのことにとらわれていたように思います。それがなくなったように感じます。以前に比べると楽になりました。

今の目標は、ミーティングに千回出ようということを立てています。最初はミーティングに参加して話をするのも嫌だったのですが、喋っていることによって、メッセージを発することができるようになったと思います。どう響いているかはわかりませんが、メッセージを発することは大事だと思っています。

ミーティングでは、普段話せないことが話せる。棚卸しというか、抱えていたものを話すことで、楽になります。ミーティングで話すことで、心の重みが取れていくように思います。ほんまにいろんな人がいます。いらいらしたことだけ話して落ち着いて帰る人もいる。ミーティングもそれぞれが自分が平穏に過ごすための、ひとつのアイテムとして使うのもありなのかなと思っています。

仕事、生活、生き方にもかかわってくることだと思いますが、正直に生きること、心を開くこと、やっていこうとするやる気、それが大事だとあらためて感じています。ダルクやNAにはいろんな人がいてるので、変につっけんどんな人、愛想のいい人もいる。相性を見た目ですることもあって、今まではあわないと感じたら避けていましたが、こっちがそう判断すると態度に出てしまうので、偏見から入っていかないように気をつけています。以前よりは心を開けていると思います。

ダルクの本とか冊子、そういうものを毎日読んでいます。最初に読んでいたことが、一か月後、三か月後で、変わって感じられるようになってきています。最初のころは話も心に響いていなくても、自分自身が平安になっていると、メッセージを受け入れられるように感じています。何か月か通っていたら、また変わっていくと思います。それは通い続けていないとわからないことですから、今わからないことでも何か月後かにはわかるようになると思います。


――最後に、この記事を読んでいる人にメッセージをお願いします。

ぼくも、覚せい剤を二度としたくないので、自分でやめたいと思っても、自分ではやめられなかったのですが、ダルクにつながって、やめられるという道筋が見えました。依存症が治ることはなくても、クスリをやめつづけていくことはできるというのを知りました。しんどいのですけど、やめていくためには必要なことだと思っています。

ダルクに通ったり入所することについて、ハードルになりそうなことがあっても、いろんな関わり方を考えてもらえると思います。入寮とか、通所とか、そういうこともスタッフは相談にのってくれます。自分にあった回復の方法を考えていけます。ぼくは通所という形でも受け入れてもらえました。覚醒剤をやめることが第一の目的。覚醒剤を使うまでの過程を改善すること。通所して、仕事をしながらですが、それでも変えていける。ぼくの中では道筋とか、やっていけるということを感じられるので、助かっています。通うことになっても、途中でやめてしまったらわからなかったことがある。せっかくつながっているのだから、気軽に相談に乗ってもらえるので、自分ひとりの考えをしないほうがいいと思います。

ぼくも最初は電話で相談しました。まず電話からでもいいのではと思います。一生懸命回復にむかっている仲間、受け入れてくれる仲間がいるので、心強いです。


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